　電気石グループの鉱物はRR^'₃R^'^'₆(BO₃)₃(Si₆O₁₈)Z₃Z^'という化学組成式で表されます。そして化学組成によって、さらに、ナトリウム電気石系列(Sodic tourmaline group：R=Na)、カルシウム電気石系列(Calcic tourmaline group：R=Ca)、空乏電気石系列(Vacant tourmaline group：R=□)の3系列に大別されます。

　電気石は現在13種類が知られていますが、そのうちの主要な9種類は上記の3系列の分類に従うと次のような行列で表すことができます。これら9種類の電気石については、Z=Z'=F,OHです。

	R(II)＝Mg	R(II)＝Li_0.5Al_0.5	R(II)＝Fe(II)
カルシウム電気石系列 R＝Ca R^'₃＝R(II)₃ R^'^'₆＝Al₅Mg	灰電気石 (Uvite)	リディコート電気石^*) (Liddicoatite)	鉄灰電気石 (Feruvite)
ナトリウム電気石系列 R＝Na R^'₃＝R(II)₃ R^'^'₆＝Al₆	苦土電気石 (Dravite)	リチア電気石 (Elbaite)	鉄電気石 (Schorl)
空乏電気石系列 R＝□ R^'₃＝R(II)₂Al R^'^'₆＝Al₆	苦土フォイト電気石 (Magnesiofoitite)	ロスマン電気石 (Rossmanite)	フォイト電気石 (Foitite)

*)リディコート電気石の化学組成は通常はCa(Li,Al)₃Al₆(BO₃)₃Si₆O₁₈(OH,F)₄と示されています。

　上記の9種類以外の4種類の電気石は特殊な組成で、

・クロム苦土電気石(Chromdravite)　NaMg₃Cr₆(BO₃)₃Si₆O₁₈(OH)₄
・オレニ電気石(Olenite)　NaAl₃Al₆(BO₃)₃Si₆O₁₈O₃OH
・バーガー電気石(Buergerite)　NaFe₃Al₆(BO₃)₃Si₆O₁₈O₃OH
・ポヴォンドラ電気石(Povondraite)　NaFe₃Fe₄Mg₂(BO₃)₃Si₆O₁₈(OH)₃O

　と表されます。これらはいずれもR=Naなのでナトリウム電気石系列に属します。クロム苦土電気石は、苦土電気石のAl³⁺をCr³⁺に置き換えたものであるといえます。オレニ電気石、バーガー電気石、ポヴォンドラ電気石はZ=O或いはZ'=Oとなり、R'のところに3価のイオン(Al³⁺,Fe³⁺)が入るので、他の電気石に比べると酸化環境下で生成されたものなのでしょう。

　現在、電気石は以上の13種類が知られていますが、電気石の組成式で、R，R^'，R^'^'のところには、

R=Ca,Na,K,□(vacancy)
R^'=Li,Mg,Fe²⁺,Mn²⁺ ,Al,Cr³⁺,V³⁺,Fe³⁺,Ti⁴⁺
R^'^'=Mg,Al,Fe³⁺,V³⁺,Cr³⁺

が入りうることが知られています。それぞれの端成分の組成をもつ電気石について未だ発見されていないものもありますが、将来発見される可能性のあるものもあります。例えば、マンガン電気石(Tsilaisite)やバナジウム苦土電気石(Vanadiumdravite)という端成分についてはその存在が提案されていますが、まだ独立種としては認められていません。この他にも第二鉄電気石(Ferridravite)のように一時は存在すると思われましたが、そのうち"消えてしまった"ものもあります。このような幻の電気石はまだまだ他にもあるかもしれません。